*咲希のお話部屋*

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『いい女の条件~彼から学んだ事』
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 ➤ 高校時代

家を出ると
雄大は握っていた私の手を
パッと離した。


「とりあえず、散歩でもするか。」


今は…家にいたくないので
私は黙って頷いた。

辺りは真っ暗で
夏場だというのに
空気がひんやりとしていた。

雄大の後ろを
重い足取りで歩く私。

泣きたい気持ちを我慢するため
私は、唇を噛み締めた。

私のそんな様子に
気づいているのか

雄大は黙ったまま
私の少し前を
スタスタと歩いていく

私は、何も考えられず
彼の足下を見ながら
そのままついていった。

しばらくして、近所の公園についた。

「とりあえず、座ろうか。」

ベンチの前で
雄大は立ち止まり
くるりと振り向いた。

街頭で照らされた私の顔を見るなり
ふぅ~と、息をついた。


「気持ちを隠すならさ…

もう少し…うまくやらないと。

諒太はともかく…美優ちゃんだって
不信がるよ?」


雄大の一言に
胸がチクンと痛む。


わかってる


わかってるけど…


気持ちがコントロール出来ない。


2人が付き合っているのは
わかってるけど…


目の前で
2人一緒いるところを見ると

やっぱり苦しい…


私が下を向いて固まっていると
雄大は私をそっと抱き寄せ
頭をそっと撫でた。


「お前って…本当に不器用だよなぁ。

ま、そーいうとこ…憎めないけど。」


彼のその一言に
我慢していた気持ちが溢れ出し
涙がぶあっと出てきた。

泣いている私の背中を

彼は、何も言わずに…
ひたすら撫でてくれた。


この時は


下手な言葉を貰うよりも


ただ、黙って
そばにいてくれた彼の行動に


私は、物凄く救われていた。






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*

翌日


モヤモヤと
色々な事を考えてしまい
結局、朝まで一睡も出来なかった。

雄大は、夜遅くまでずっと
黙ったままそばにいてくれた。

家に帰ったら
もうもう諒太達はいなくて

私の部屋には
《漫画、借りていくぞ!》
と、汚い文字で書き置きがあった。


鏡を見ると酷い顔。
目の下にはクマが出来て
白眼は充血し
唇はカサカサだった。


テーブルの上には
スマホの着信ランプが


手にとると
雄大からのLINE だった。


《ちゃんと眠れた?

また、何かあったら相談のるから。》


私を元気づけようとしたのか
最後に慣れない絵文字が入れてあるから
思わず、クスッと笑ってしまう。


ありがとうと返事を打ち


慌てて身支度をした。




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*

玄関を出ると
諒太が門の前に立っていた。


「えっ…どうしたの?」


予想外の出来事に
テンパってしまい
思わず…声がうわずる。

「どうしたの?って
お前を待ってたんだよ。

昨日、お前
いなくなっちゃったからさ…

これ、渡そうと思って。」


「何?」


渡された小さな封筒の中身を開けると
それは、私の大好きなミュージシャンの
ライブチケットだった。

どうしても行きたくて
でも、どうしても取れなくて

泣く泣く諦めたもの…


「どうしたの…これ?」


あまりの驚きに
放心状態の私…


「あはは!びっくりした?(笑)」


私のリアクションを見て
ちょっぴり得意気な顔の諒太


「うん…かなりびっくり。

一体どんな裏技使ったの??」


私がしつこく聞いても
しらばっくれて教えてくれない。

このチケットは
プレミアムチケットで
ネットオークションでもかなり高値で

ちっとやそっとじゃ 
手に入らないものだったから

彼がどうやって手に入れたのか
とても気になった。


「いるの?いらないの?」


「欲しい!!いくらだった?」


「いいよ。やるよ!」


「いや、そうはいかないよ!

ちゃんと払うから!!」


「お前から金貰おうなんて
思ってねぇよ。

また今度、手料理でも食わせて。
あと、漫画も(笑)」


「それは別にかまわないけど、、、」


「んじゃ~、そういう事で!
ほら、学校いくぞ!」


ニコッと笑った諒太の顔は
とても眩しくて


昨日は散々落ち込んで
凹んで、眠れなくて
諦めようと思っていたのに


こうやって優しくされるから


だから…


諦められなくなる。



ズルいよ…



諒太。





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*

「じゃ~な!」

家から学校まで
わずか15分の道のりだったけれど
久し振りに2人っきりで通学できて
嬉しかった。

教室前で、手を振り
彼と別れる。

彼の姿が見えなくなるまで見送り
ニヤニヤする顔を抑えながら
教室に入ると

そんな私を見つけた美緒が
冷やかしにやってきた。


「相変わらず仲のよろしい事で♡」


「別に、、そんなんじゃないよ!

今日は、チケット貰ったから…」


「えっ?チケット?」


「うん。美緒の分もあるよ。二枚」


チケットを渡すと

「えぇぇーー!!」

美緒も興奮していた。


「どうやって手に入れたの?これ?」


「わかんない。

諒太がくれたんだよ。」


「くれた?タダで?」


「うん…」


「タダなんて…ありえない…」


「だよね、、」


「うん。」


彼がどうやって
このチケットを手に入れたかは
わからない。

もしかしたら知り合いから
たまたま手に入れただけなのかも
しれないし

深い意味なんて
ないのはわかってるけど…


でも、こんなに高価なものを
タダでくれるなんて


私の為に
わざわざ探してきてくれたなんて


何だかちょっと…期待しちゃうよ。


ダメだってわかってるのに

自分にとって都合のいいように
脳内変換してしまう
私の悪いクセ。





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*

その日は一日中嬉しくて
学校の授業なんて上の空だった。


その日の放課後


窓からグラウンドを見ると
大きな声を張り上げながら
サッカーをやる諒太の姿が見えた。


彼女がいるって
わかってるけれど…


でも、思うだけならいいよね?


貰ったチケットを握り締め
私は、彼を好きになった時の事を
ふと…思い出した。


初めて意識したのは
幼稚園の時。


ジャイ子のような
体格のいい意地悪な女の子がいて
よく私や友達を仲間外れにしてきた。


そんな時、いつもやってきて
ジャイコに文句を言ってくれた。


責任感があって
曲がった事が大嫌い。
でも、面白くて
いつも笑わせてくれる。


彼と一緒に過ごす時間は
とてもとても楽しくて
私は、いつも彼にくっついていた。


これが恋心だと知ったのは
小学校3年の時。


お互いの家族で
川遊びに行った時の事。

少し川の流れが速いところで
私のサンダルが脱げて
流されてしまった。

お気に入りだった
花柄のサンダル。

でも、あまりの川の流れの速さに
一瞬のうちに、激流に飲み込まれた。


そばにいた母に
「また新しいの買ってあげるから」

そう言われたけれど

正直…ショックで泣きそうだった。


流れるサンダルを
悲しげに見つめていると
雄大は、私を優しく慰めてくれた。


ところが、諒太は
サンダルを追いかけて
走りだしていた。


「諒太!無理だよ!危ないから!」


諒太のお母さんの声を無視して
諒太はサンダルを追いかけていく。


「諒太!!危ない!」


更に流れの速く 
深い方へ向かったので
周りの大人達が慌て始め
必死で追い掛ける。


足の速い諒太は
サンダルを追い掛け
更に走る。


遠目でわからなかったけれど
途中で、ぼちゃんと諒太が 
川に飛び込んだ。


「諒太!!!」

大きく響く
諒太のお母さんの声。


大人達が騒ぐ中
オロオロとする私。


どうしようどうしよう…


そう思いながら
待っていたら


しばらくして
びしょ濡れになりながらも
ニコッと笑いながら
片手にサンダルを持った諒太が
戻ってきた。


「ほい。」


ポーンと放り投げるように
私にサンダルを渡してきた。


落ちたサンダルを見つめながら
ぼーっとしていると


「ほら、足あげろよ!」


彼は私の足を掴み
サンダルを履かせてくれた。


「ありがと。」


小さな声でお礼を言うと

彼は、私を見上げて
ニカッと笑った。

後でおばさんには
こっぴどく叱られたみたいだけど


「お前、このサンダル
お気に入りだったもんな。」


とびっきりの笑顔で…そう言われて


子供ながらに


胸の奥が、キュン…と、なった。






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*

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