*咲希のお話部屋*

私の過去&小説 etc…

最新情報、更新情報などは
Twitterにて発信しております★

右側のカエル姿の私の画像をクリックしてください♪


現在エブリスタにて

『いい女の条件~彼から学んだ事』
↓↓↓
https://estar.jp/_novel_view?w=25347542

アップしています。

2019年02月

少しでも気持ちが緩んだら
泣き出しそうだった。

必死で笑顔を作り
気持ちを立て直す。



…………けど



話しながら



ポロリ…


純平の声を聞いて

心の中に溢れていた
色々な思いが
上限を超えてしまったのか

涙が頬から伝ってきた。

「…………っ」


我慢……しなきゃ…

純平が変に思ってしまう……

そう思うのに

思えば思うほど
涙が止まらなくなってしまう。

そして

そんな私の様子に
純平が気がつかない筈がない……


「……まゆ……?

泣いてるのか?」


「……ううん、泣いてなよ

ちょっと鼻水がっ……」


震えた声で嘘をついても
バレバレなのに……

「何かあった?」

「……なにも……」

「そんな訳ないだろ?」


私が何も応えないから
何かを察したのだろうか?


「今から行くから!」

「えっ?……ちょっと…待って」

「何で?」

「私なら…大丈夫だから。」


彼の勉強の妨げになりたくなくて
必死で涙を抑え、冷静に話す。


ところが……


「俺がお前に会いてぇーんだよ!!」


彼はそう言うと


私の返事を待たずに
荒っぽく電話を切った。





彼とのLINE のやりとりを終えてから
30分以上が経過していた。


こんな時間に…どうしたのだろう?

さっきLINE でやり取りしたし
明日、学校で会えるのに…


こんなタイミングで

こんな気持ちのまま
電話に出たら…


彼の声を聞いてしまったら…


私はきっと、泣いてしまう。


文字だけのやり取りなら
誤魔化せても

私の声を聞いたらきっと
カンのいい彼には
絶対に何かあったと、気付かれてしまう。


だから…出るのをためらった。


部屋中に通鳴り響く着信音


その音が
嬉しくもあり……切ない。


ごめん…純平


今は…出られないよ。


私は、布団にくるまり
耳を覆った。


今日だけ…

 
今日だけは…


冷静でいられる自信がないから


明日になったら
いつもの私に戻るから


少しだけ…


時間を下さい。


20コールぐらいして
電話は切れた。

きっと、もう寝たと
諦めてくれただろう。

これで良かったんだ。



これで……



布団の中で身体を丸めて
ぎゅっと目を閉じる。



すると



♪~♪~♪



ポップアップ画面で
既読にならないように
内容を確認した。


『今、勉強終わった。

何だかわかんねぇけど
無性にまゆの声聞きたくて、眠れねぇ。』

彼の言葉に
嬉しくて胸がいっぱいになる。


起きてるよ…


本当は


私だって
純平の声が聞きたくたまらない。


会って抱きしめて欲しい。


キスを……したい。


こらえていた気持ちが
抑えきれなくなり

衝動的に
電話を手に取ってしまった。


ダメ…


かけちゃ……ダメ。


頭ではわかっているのに
どうしても抑えきれなくなくて

震える指でドキドキしながら

コールしてしまった。


RRRR……RRRR


1コール


2コール


3コール


4コール


ドクドク上がる脈。

待っている間、極度の緊張感から
切ってしまおうか?


そう思った瞬間



「まゆ?」


純平の声が聞こえた。


「…………うん。」


「ごめん、起こしちゃった?」

「ううん…いいの。何かあった?」


なるべく平静を装いながら
あたかも寝ていたかのように
ゆっくりと話す。


「勉強し過ぎたせいか


眠れなくてさ… 
まゆの事、ずっと考えてた。」

まるで

眠れなかった私の気持ちを
代弁してくれているかのような言葉。


純平の気持ちが嬉しくて
思わず涙が込み上げる。


そして少しずつ

ホッとしたような
穏やかな気持ちが全身を駆け巡った。


「電話……嬉しい。

純平とだったら
何時までだって付き合うよ。」


彼の声に

モヤモヤしていた気持ちが
少しずつ消えていく

ありがとう

大好き……


彼と話しながら


心の中で、何度も何度も
そう思った。



剛は無事に逃げ切れたのだろうか…?

自分の事ばかりで
彼の心配をする余裕がなかったけれど
ふと、彼の事が心配になった。

どう見ても、体格差があって
勝ち目のない相手だった。

無事を確かめたいけれど
もし、その事が奈津さんに知られて
嫌な気持ちにさせてしまったら?


更にまた
何かに巻き込まれたら?

無事を確認して
お礼とお詫びをしたいけれど
下手に連絡をしてはいけない…と
躊躇してしまう。

散々悩んだ挙げ句
こちらからは何もせず
ミオから情報が入るのを
待とうと思った。


部屋に戻りスマホをチェックする。


純平からの連絡は…ない。


テスト勉強で忙しいのだろうな…と
思いながらも、彼にLINE をした。


『遅くにごめんね。

今日は帰りが遅くて
今、お風呂から出て一息ついたよ。

勉強頑張ってる?』


♪~♪~♪


私からの連絡を
待ってくれていたようで
直ぐに返信が来た。


『お疲れ。

今日はかなり勉強頑張ったのか?(笑)』

彼にバイトの事は秘密だったので
バイトの日は
ミオの家に勉強会に行くと話していた。


『うん。
物凄く頑張ったよ!
私も1位狙っちゃおうかな?』

嘘をついている事に
胸がチクリと痛みながらも

カンの鋭い彼に
変に思われないように
なるべく明るく振る舞った。


『あはは!

まゆに負けて5位以内に
入れなかったらどーしよ(笑)』


『私に負けて
6位になったりして?』


『それはマジ勘弁(笑)』


ここ最近


純平はテストに向けて猛勉強していた。


“ 5位以内に入って、家を出る “


お父さんにも話をして
約束を取り付けてくれた。


彼は有言実行の人

中途半端は嫌いらしく
勉強に専念する為に
学校以外で私達が会える時間は
極端に減った。


そして


毎日していた電話も
しばらく止める事になった。

寂しかったけれど
学校では毎日会えるし
時間のある時には
少しLINE 出来たから我慢できた。


『じゃあ…

今日は遅いから…寝るね。おやすみ!』

数回やりとりして…

彼の勉強の妨げになりたくなくて
無理矢理話を切った。

本当は直接
声が聞きたかったけれど…

明日学校で会えるんだし
我慢しなきゃ

そう思ってスマホを置いた。

「よし……寝よう!」

眠くなかったけど
無理矢理目を閉じる。

けれども

今日の出来事が
頭に浮かんでしまい
気持ちが沈む。


考えちゃダメ…

そう思うのに

心の中がモヤモヤして
ちっとも眠れない

目を閉じれば
再び嫌な思いが頭に浮かび
息が苦しくなる。


辛い……


辛い…よ…


泣きそうな思いを
ぐっとこらえる


我慢……しなきゃ…


忘れなきゃ……


頭の中を空っぽにしようと
無理矢理深呼吸する。


しばらくすると


RRRRR……RRRR


電話の着信音がきこえた。


誰?


スマホを手に取り
発信者を見る


発信者は……


純平だった。




*

雄大に連れられて
家までタクシーで帰った。

張り詰めていた緊張が解けて
疲れが一気にきたのか
薬がまだ残っているのか
途中で何度もウトウトしてしまった。

帰りが遅くなった理由は
雄大がうまく親に
説明してくれていたらしく
何か言われる事はなかった。

雄大に、警察に行こう…と
強く言われたけれど

私は、行く事を拒否した。



何故なら…

酷い思いをしたけれど
大きな怪我をした訳でもないし

身体をいたずらされたものの
強姦される前に
逃げ出す事が出来たから。

警察に相談して
ヘタに薬の事を追及されて
大事になるのも怖かったし


何よりも


助けてくれた剛を
巻き込みたくなかったし

純平にこの事を
知られたくなかった。


「まゆがそれを望むなら…
俺は従うよ。」


雄大は
私の気持ちを尊重してくれた。


「でも…この先

お前に危害が及ぶような事があったら
俺は、勝手に動くからな。

その時は文句言うなよ。」


「……わかった…」


部屋に戻り
ドサッとベッドになだれ込む。

無事に家に着いたと
ミオに連絡すると

「話はまた明日ゆっくり聞くから。
とりあえず、今日はしっかり休んで。」

そう言われて手短に電話を切った。

頭が少し重く…ダルい。

純平にも連絡したかったけれど

その前にどうしても
お風呂に入りたかった。

あの男に触れられた全てを
綺麗に洗い流したかった。

脱衣場で服を脱ぐと
胸元に赤い斑点がある事に気付いた。


「なに……これ…」

それを見た瞬間
あの時の嫌な思いがよみがえる。

ゴシゴシ泡立てて洗っても
消える訳はなく…

身体の汚れが
落ちた感じがしない。


ぬめっとした厚い唇

ゴツゴツした手

気持ち悪い汗


あの時の感覚が
リアルに思い出され

ショックと罪悪感で…
心が押しつぶされそうになる。

シャワーのお湯と一緒に
声を出して泣いた。

悔しくて、悲しくて
やり場のない気持ち


そして

止まらない涙……


でも


忘れなきゃ……


頬をパチンと叩き
最後は冷水で全身を洗い流した。

身体は冷たかったけれど

でも、気持ちは少し落ち着いた。

タオルで身体を拭いて
姿勢を正し、目を閉じて上を向く。


そして、ゆっくり深く深呼吸した。

過ぎた事はもう巻き戻せない。

だからもう…
この事では絶対に泣かない…

そしてもう
二度と同じ過ちを繰り返さない。


自分の身は…自分で守る。


もっと強くならなけば…と
心の中で誓った。






*

しばらくして、雄大がやってきた。


「あ…ごめん。雄大来たから、一度切るね。」

「純平君のこと、ちゃんと考えなよ!。」

「……うん。ありがとう。」


ミオとの電話を切り
彼の元へと向かう。

ボサボサ頭の私の姿を見て
何か感じるものがあったのか

彼は、口に手を当て
物凄く驚いた顔をした。


「一体……何が……あった……?」

「……ごめん、、、もう大丈夫だから。
今は何も…聞かないで欲しい。」

「大丈夫じゃないだろ?
純平は?あいつはどうした?」

「純平には…言ってない。」

「言ってないって、、、何で??」

「バイトの事、内緒だし、、、
それに…心配かけたくないし…」

「何だよ…それ…」


雄大の声のトーンが
徐々に低くなる。


「肝心な時に頼れない人を
彼氏って呼べるのか?」

「別に…頼れない訳じゃないよ。

たまたま今回は…
事情があって、言えなかっただけ。」

「そーいうのが、おかしいんだよ!!」


彼の大きな声に
思わずビックリして…身をすくめた。


「ゴメン……」


いつも穏やかな彼が
こんな感情的になるなんて…

本当に心配をかけてしまったんだな…と
申し訳ない気持ちになる。


「こっちこそ…
心配かけて、ごめんなさい。」


しばらく、気まずい沈黙が続く。

何か言わなきゃ…

そう思っていると

雄大がゆっくり口を開いた。


「お前が…

純平と付き合うと聞いてから

いつかこんな日が
来るんじゃないかって…心配だった。」


静かだけど…
物凄く低くて重いトーン。

怒りを
必死で抑えているのがわかった。

「別に…
純平が悪い訳じゃない…」

「そういう問題じゃないんだよ…」

雄大の肩は…


微かに震えていた。






*

↑このページのトップヘ