剛は無事に逃げ切れたのだろうか…?

自分の事ばかりで
彼の心配をする余裕がなかったけれど
ふと、彼の事が心配になった。

どう見ても、体格差があって
勝ち目のない相手だった。

無事を確かめたいけれど
もし、その事が奈津さんに知られて
嫌な気持ちにさせてしまったら?


更にまた
何かに巻き込まれたら?

無事を確認して
お礼とお詫びをしたいけれど
下手に連絡をしてはいけない…と
躊躇してしまう。

散々悩んだ挙げ句
こちらからは何もせず
ミオから情報が入るのを
待とうと思った。


部屋に戻りスマホをチェックする。


純平からの連絡は…ない。


テスト勉強で忙しいのだろうな…と
思いながらも、彼にLINE をした。


『遅くにごめんね。

今日は帰りが遅くて
今、お風呂から出て一息ついたよ。

勉強頑張ってる?』


♪~♪~♪


私からの連絡を
待ってくれていたようで
直ぐに返信が来た。


『お疲れ。

今日はかなり勉強頑張ったのか?(笑)』

彼にバイトの事は秘密だったので
バイトの日は
ミオの家に勉強会に行くと話していた。


『うん。
物凄く頑張ったよ!
私も1位狙っちゃおうかな?』

嘘をついている事に
胸がチクリと痛みながらも

カンの鋭い彼に
変に思われないように
なるべく明るく振る舞った。


『あはは!

まゆに負けて5位以内に
入れなかったらどーしよ(笑)』


『私に負けて
6位になったりして?』


『それはマジ勘弁(笑)』


ここ最近


純平はテストに向けて猛勉強していた。


“ 5位以内に入って、家を出る “


お父さんにも話をして
約束を取り付けてくれた。


彼は有言実行の人

中途半端は嫌いらしく
勉強に専念する為に
学校以外で私達が会える時間は
極端に減った。


そして


毎日していた電話も
しばらく止める事になった。

寂しかったけれど
学校では毎日会えるし
時間のある時には
少しLINE 出来たから我慢できた。


『じゃあ…

今日は遅いから…寝るね。おやすみ!』

数回やりとりして…

彼の勉強の妨げになりたくなくて
無理矢理話を切った。

本当は直接
声が聞きたかったけれど…

明日学校で会えるんだし
我慢しなきゃ

そう思ってスマホを置いた。

「よし……寝よう!」

眠くなかったけど
無理矢理目を閉じる。

けれども

今日の出来事が
頭に浮かんでしまい
気持ちが沈む。


考えちゃダメ…

そう思うのに

心の中がモヤモヤして
ちっとも眠れない

目を閉じれば
再び嫌な思いが頭に浮かび
息が苦しくなる。


辛い……


辛い…よ…


泣きそうな思いを
ぐっとこらえる


我慢……しなきゃ…


忘れなきゃ……


頭の中を空っぽにしようと
無理矢理深呼吸する。


しばらくすると


RRRRR……RRRR


電話の着信音がきこえた。


誰?


スマホを手に取り
発信者を見る


発信者は……


純平だった。




*