雄大に連れられて
家までタクシーで帰った。

張り詰めていた緊張が解けて
疲れが一気にきたのか
薬がまだ残っているのか
途中で何度もウトウトしてしまった。

帰りが遅くなった理由は
雄大がうまく親に
説明してくれていたらしく
何か言われる事はなかった。

雄大に、警察に行こう…と
強く言われたけれど

私は、行く事を拒否した。



何故なら…

酷い思いをしたけれど
大きな怪我をした訳でもないし

身体をいたずらされたものの
強姦される前に
逃げ出す事が出来たから。

警察に相談して
ヘタに薬の事を追及されて
大事になるのも怖かったし


何よりも


助けてくれた剛を
巻き込みたくなかったし

純平にこの事を
知られたくなかった。


「まゆがそれを望むなら…
俺は従うよ。」


雄大は
私の気持ちを尊重してくれた。


「でも…この先

お前に危害が及ぶような事があったら
俺は、勝手に動くからな。

その時は文句言うなよ。」


「……わかった…」


部屋に戻り
ドサッとベッドになだれ込む。

無事に家に着いたと
ミオに連絡すると

「話はまた明日ゆっくり聞くから。
とりあえず、今日はしっかり休んで。」

そう言われて手短に電話を切った。

頭が少し重く…ダルい。

純平にも連絡したかったけれど

その前にどうしても
お風呂に入りたかった。

あの男に触れられた全てを
綺麗に洗い流したかった。

脱衣場で服を脱ぐと
胸元に赤い斑点がある事に気付いた。


「なに……これ…」

それを見た瞬間
あの時の嫌な思いがよみがえる。

ゴシゴシ泡立てて洗っても
消える訳はなく…

身体の汚れが
落ちた感じがしない。


ぬめっとした厚い唇

ゴツゴツした手

気持ち悪い汗


あの時の感覚が
リアルに思い出され

ショックと罪悪感で…
心が押しつぶされそうになる。

シャワーのお湯と一緒に
声を出して泣いた。

悔しくて、悲しくて
やり場のない気持ち


そして

止まらない涙……


でも


忘れなきゃ……


頬をパチンと叩き
最後は冷水で全身を洗い流した。

身体は冷たかったけれど

でも、気持ちは少し落ち着いた。

タオルで身体を拭いて
姿勢を正し、目を閉じて上を向く。


そして、ゆっくり深く深呼吸した。

過ぎた事はもう巻き戻せない。

だからもう…
この事では絶対に泣かない…

そしてもう
二度と同じ過ちを繰り返さない。


自分の身は…自分で守る。


もっと強くならなけば…と
心の中で誓った。






*