諒太の言葉が耳の奥まで響く。


《起きてたんだろ?》



うそ……


バレ…てた…?


あまりの驚きに
目を大きく見開き
思わず両手で口を覆った。


「次の日の朝

お前の態度見て…すぐにわかった。」
 

しらをきり通す事もできたけれど
どう答えていいのかわからなくて

私は黙ったまま
彼の言葉を聞いていた。


「俺…その時思ったんだよ。

まゆは大人だな…って。
さっきの事もそう。

俺の事、気を遣って
気まずくならないようにしてくれた。

本当は、怒りたいのに

我慢して…」


「別に…そんな事……ない…」


本当に…怒りたいなんて
これっぽっちも思っていなかったから

ただ、そう言っただけなのに…


「無理すんなよ…」

彼は、そう言うと
黙ってしまった。

しばらく…気まずい沈黙が続いた。


言いたい事も

聞きたい事も

山ほどあるのに…


熱のせいか
それとも、衝撃が大き過ぎたのか

思考回路がおかしくなっていて
全然言葉が出ない。

どうしよう……

気持ちだけが焦り
布団をギュッと握りしめた。

大きく深呼吸をして
ゆっくり頭を整理する。

今、彼に聞きたい事


《何故、私にキスをしたの?》 


ずっと気になっていた。


どうして?

私の事が好きだから?


それとも

単なる気の迷い?

おふざけ?


真実を知るのが怖かったけれど

聞くチャンスは
今しかないと思った。

「ねぇ、諒太。
一つ聞いていい?」

「……何?」


「どうして……

私にキスをしたの?」






*