美しい花火に
心が満たされていく

今まで

こんな気持ちで花火を見た事が
あっただろうか?

そんな事を考えていたら

ほんの一瞬だけ
諒太の事が頭に浮かんだ。

 
そういえば昔は
家族ぐるみでよく花火を見たっけ。

あの時はあの時で
楽しかったな‥

懐かしい気持ちと共に


ふと

先日の彼の様子を思い出された。


諒太、、、

美優ちゃんと…
うまくいってるのかな?

大丈夫かな?

私の心配する事じゃないのに
お節介なのは‥悪いくせ。

もう…気にするのはやめなくちゃ‥


打ち上げ総数はかなり多かったのに
花火はあっという間で

気付けば、終了時間になっていた。

「やべ‥すげー行列。」

駅までの道のりは
帰る人達で埋め尽くされ

電車にすぐに乗れるかどうかも
全く検討もつかない状態だった。

「帰りの切符も買うのも一苦労だね。」

「往復買えばよかった。」

「だね。」

人の波が落ち着くまでは
しばらく待とう‥という話になったけれど

見る限り
相当待たされそうな感じだった。

困ったね‥なんて
2人で話をしていると   

私のスマホが着信した。

「まゆ‥‥電話!」

人混みの中でわかるようにと
音量マックス&
バイブレーションにしていた。

ディスプレイを見ると
知らない番号。


「誰?」

「わかんない‥知らない番号。」

知らない番号だった為
無視をすると
10コールぐらいで電話は切れた。

ところが

再び、電話が鳴り始める。


何度無視しても、鳴り続ける。

「知り合いなんじゃねぇの?」

「‥‥そうなのかな

、、、、、あっ。」



ふと


さっき、剛に会って
電話を貸した事を思い出した。


「どうした?」

「もしかしたら‥」

剛に会って
スマホを貸した経緯を簡単に話すと   


「そんな大事な事、もっと早く言えよ!」


純平に物凄く怒られた。 


あまりの剣幕に
思わず‥怯んでしまう。


「ゴメン、、、なさい。
花火が直ぐに始まっちゃったし‥
でも、話すつもりだった。」

「次、かかってきたら
俺が出るから!いいな?」

「‥‥うん。」

何となくだけど‥
機嫌の悪そうな純平。

無防備に‥

スマホを貸してしまった事を
怒っているんだよね。

心の中で
何度も純平に謝るものの

彼の顔は険しく

2人の間に
不穏な空気が流れた。 

さっきまで
幸せで満たされていたのに‥


どうしよう‥



もう遅いけれど

自分の軽率な行動に
自己嫌悪になる。


そして再び


知らない番号から着信した。







*