駅のホームは
平日とは思えないぐらいの
物凄い人だかりだった


「これ‥みんな
花火大会行く人達なのかな?」

「‥‥多分」

「早く場所取りしないと
座るところ無くなっちゃうかも?」

「……かもな。」


開始時刻まで
まだ二時間以上あるのに
予想以上の人の多さに驚いた。

余裕で座れると思った電車は
座れるどころか人口密度が高く

純平がドアに手をついて
私のスペースを確保してくれた。

下から見上げる彼の姿は

いつも以上にカッコ良く見えて


今まで

男の人にこんな事を
してもらった事なんてなかったから

何だか守られているような

そんなドラマのワンシーンのような
シチュエーションに


ドキドキしっぱなしだった。


花火会場の駅に到着すると
一斉に人が降りる


「……やっぱりみんな花火だね。」

「だな。」


河川敷をぞろぞろと人が歩いていく

人は多いけれど
まだ所々座るスペースはあって
適当なところにシートを広げた。


「まだ時間まで結構あるな。」

「だね。何か食べる?」

「お、いいね」

バッグからタッパーを出し
蓋を開けた途端
純平は嬉しそうな顔をした。


「これ全部まゆが作ったの?」

「うん。1人で作ったよ!
愛情たっぷり入ってるよ。」

純平の表情を見るだけで
何だか幸せを感じて
思わずにんまりしてしまう。

そんな私を見て
ニコッと笑いながら
彼は私の横に
ピタリとくっついてきた。

「まゆも食べろよ。」

いつもの如く
私に食べさせようとする

パクっと口に入れて
モグモグしていると

彼はジッと私を見つめ
頬にキスをしてきた。  


「……ちょっと、、、人が見てるよ」

「知らない人ばかりだし。」

慌てる私の手を握り
何だか、いつも以上に甘々な純平。

周りの目なんて
全く気にしていない。


‥‥でも



嫌じゃない。


目を閉じながら
彼に寄り添い

ほんの少し流れてくる風が心地よくて


花火はまだ始まっていないのに


このまま


眠ってしまいたい気持ちになった。








*