それから1時間後ぐらいに
雄大が我が家にやってきた。

「あ、雄ちゃん、いらっしゃい!」

母が嬉しそうな顔で出迎える。

諒太と雄大の母親は看護師で
夜勤もあって不規則だった。

彼らが小さな頃から
こうやって我が家で
一緒に晩御飯を食べる事はよくあって

彼らが大きくなった今でも
少なくなったとは言え
母の気まぐれで
こうやって一緒に食べる事はたまにあった。


「ご馳走になります!」


ニコニコ顔の雄大。


「諒ちゃん、遅くなるみたいだから
先に食べてよっか?」


母がそう言って
テーブルに取り皿を準備し始めた。


「諒太から…連絡あったの?」


「あ、うん。

まゆが帰って来る前にね
晩御飯食べに来ない?ってメールしたの。

そしたら
美優(みゆう)ちゃんと行くところがあるから
少し遅くなるって。」



美優ちゃん…


その名前が、母の口から出た瞬間

心臓が

ドクンドクンと脈打った。


美優ちゃんこと
花田美優(はなだみゆう)ちゃんは諒太の彼女。


同じ中学の同級生だったが
私は、一度も同じクラスになった事はなく
顔も知らなかった。


けれども
諒太が彼女と付き合い始めてから
彼を通じて話すようになり


私も母も、顔見知りになった。


そう言えば…
夜の8時頃来るって言ってたけど

何の用事だろう?

ふと、そんな事を考える。


すると


「ああそう言えば!

美優ちゃんも一緒においでって
誘ったから、来るよ!」


「えっ?」



母のその一言に




一気に目の前が暗くなった。






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