*咲希のお話部屋*

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現在エブリスタにて

『いい女の条件~彼から学んだ事』
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「何笑ってんだよ!」

「いや…別に。」


駅までの道のりを
彼と一緒に歩く。

さっさと別れたいのに
そのタイミングが掴めなくて
正直…困っていた。

途中、細い道に差し掛かった時
彼はさりげなく
車道側に移動してくれた。


意外と優しいんだな…


ふと、そんな事を考える。


とても無愛想だけど
ハタから見ると
見た目も普通だし
身のこなしも悪くはない。


ただ…喋り方はなっていないけど。


思ったよりも
悪い人ではないのかもしれない。


「奈津さんは…元気?」


「さぁ?

最近は会ってねぇし。」


「え?」


「電話かかってくるけど、無視ってる。」


「うそ…何で?」


あんなに奈津さんに一途だった人が?


……正直、信じられなかった。


「違法ドラッグに手を出したみたいで

変なやつらとつるんでいるし
もう付き合いきれねぇよ。

俺にも売りつけてくるしさ。

俺、一応進学するつもりだし
あんまりゴタゴタに巻き込まれたくない。」


「じゃあ何で、万引きしたの?」


「それ、言っちゃう?」


「言っちゃう。」


私の返しに
彼はぷっと笑い出した。


「時々、ストレスでさ…

衝動的にやりたくなんのよ。
やめなくちゃって、わかってんだけど。」


「もう、絶対にダメだよ?」


「まぁ…やる時は
バレないようにやるさ。」


「ちょっと!!」


私が大声を上げると
彼はびっくりした顔をした。


「……嘘だよ。
お節介ババアがウルサいからな。」


「誰がお節介ババアだって?」


私が怒ると
今度はゲラゲラと笑い出した。


しばらくは
くだらない雑談をしていたのだけど

その後、急に無言になった。


何か…考えているのだろうか?



その横顔は


何となくだけど…


寂しそうに見えた。



「俺と一緒にいるとさ

あいつ、甘えちゃうから。
少し離れようかなって。」


「好きなのに?」


「それも一つの愛情だろ?」


「ふぅん。」


「奈津も…

あんたみたいな女友達がいたら
あんな風にはならなかったのかもな…」


「………」



何だか、彼の言葉の
一つ一つに


深い意味が
込められているような気がして


胸がチクリと痛んだ。







*

「ひゃっ!!!」


あまりの驚きに
思わず変な声を出してしまった。


「あ、、、悪ぃ。」


振り向くと、予想通り
剛が立っていた。


「もう~!!

心臓に悪い!!脅かさないで!!」


膝がガクガク震え
思わずその場に
しゃがみこんでしまった。


「脅かして悪かったよ。
でも、待ってるって言ったじゃん。」


「どこで…待ってたの?」


「そこのマック。

丁度、この道見えるし。
お前が見えたから急いで出てきた。」


この人は…


一体、何の為に
私を待っていたのだろう?


彼をじろりと見上げると


「そんな怖い顔すんなよ」


手を差し出されたけれど
私は、その手をとらず
自分で立ち上がった。


「随分嫌われたもんだな。…俺も。」


「別に、好きも嫌いもないよ。

ただ、純平以外の男の人と
1対1で関わるのが嫌なだけ。」


「へぇ~、今時そんな女いるんだな。
そんなに純平が好きなの?」


まるで、人を見透かしたような
嫌な目つき。

心の中を覗かれているようで
思わず目をそらしてしまう。


「それで…用は何?

私を待ってたって事は
何か用があるんでしょ?」


「ん…別に?」


「はぁ?」


「用がなくちゃいけないの?」


「いけないとか
いけるとかじゃなくて、、、、」


何も考えてなさそうな剛の顔を見て
ふぅ~と、ため息しか出ない。


「用が無いなら帰ります。」

 
そのままスタスタと歩き始めると
彼もそのままついてくる。


「本当…お前って冷たいな。」


「……別に…いつもこんな感じだよ。」


「あのさ…こないだの商品…
ちゃんとお金払ってきたぜ。」


「………え?」


剛の言葉に耳を疑った。


「……謝りに行ったの?」


「いや、謝ってはいない。」


「じゃあ、どういう事?」


「盗んだ商品を
そのまま店に持ち込んで
レジ通して買ってきた。」

彼は、ヒラヒラと
商品を買った時のレシートを
私に見せた。


「電話で話しても
信じて貰えねぇからな。」



この人は…

たったそれだけの事を
報告する為に

私を待っていたの?


謝りに行かなければ
意味がないと思うのだけれど…

正直、そんな事をする人だと
思っていなかったし

彼なりに反省しているのかな…?


そう思ったら

何だかちょっぴり
嬉しい気持ちになった。


「へぇ~、少しは反省したんだ。」


「お前がウルサかったからよ。

後でチクられても嫌だし。
これでもう、万引きじゃねぇからな!」


「……別に……言ったりしないよ。」


「そんなのわかんねぇだろ?!」



何だか……この時


彼に対するイメージが変わった。


もっと怖い人だと思っていたけど
本当はそうでもないのでは?


何故かそんな風に感じて


思わず…笑ってしまった。






*

奈津さんの妹さんに会った翌々日

剛が数人を連れて
お店にやってきた。

バイト先を教えていないのに
何故わかったのだろう?


もしかして…瑠香さんに聞いた?


その日は最悪な事に
頼りのミオも用事があって
バイトが休みだった。

お店で何かされたら
どうしよう…

不安で不安でたまらなかった。


彼がお客様である以上
追い返す訳にもいかない。

私は、なるべく冷静を装い
テーブルに向かった。


「いらっしゃいませ
メニューをどうぞ。」


「やっぱり奈津の知り合いって
お前だったんだ。」


「ここ…瑠香さんに聞いたの?」


「さぁ、どーでしょう?」


ニヤニヤしながら
私の顔をじっと見つめる。

その笑顔がしらじらしくて
イラッとする。


「何?剛の知り合い?
かわいいじゃん!紹介してよ!」


一緒にやってきた友達も
好奇の目で私を見る。


「ご注文が決まりましたら
お呼びください。」


その場の雰囲気に耐えられず
軽く会釈してその場を離れようとすると


「おい、ちょっと待てよ。」


少し大きめの声で呼ばれた。


「何でしょう?」


「何でそんなに他人行儀なんだよ。
せっかく来てやったのに。」


「別に、来て欲しいなんて
頼んでしませんが。」


「それ、お客に向かって言う言葉?」


「………申し訳ありません。」


「なぁ、今日バイト何時に終わる?」


「何でそんな事聞くんですか?」


「ちょっと話したいから。」


「言いたくありません。」


「バイト終わるまで待ってるよ。」


「そういうの困ります。」



ダメ…


彼のペースにハマってはダメ。


なるべくにっこり笑顔で対応し
私は、気にしていない風を装った。

その日は、友達が一緒にいたからか

私の心配をよそに
彼はそれ以上
店内で絡んでくる事はなかった。

そして、バイトが終わり
警戒しながら、店の外に出る。


特に人影はなく、ほっとして歩いていた。


けれども


少し油断していた時に


ポンと後ろ肩を叩かれた。






*

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