「純平……っ…」
切られた電話に向かって
思わず声をあげる。
どうしよう…
ぎゅっとスマホを握りしめ
その場に立ち尽くした。
今、もし彼に会ってしまったら…
冷静でいられる自信がない…
……けど……
会いたい
会って抱きしめて欲しい
汚れた身体と心を
綺麗に洗い流して欲しい…
彼の温もりに癒されたい……
チラリと時計を見る。
時刻はもう
深夜11時になろうとしていた。
一階の親はもう寝ている。
抜け出そうと思えば…
抜け出せる。
どうしようという思いよりも
純平に会いたいという
気持ちの方が上回り
私は、急いで身支度をした。
リップを持つ手が震えている。
この震えは…何なのだろうか?
「………っ」
何かの拍子に
今日の出来事が思い出されるのか
心の奥底に何かモヤモヤした
どす黒いものを感じて
胃がキリリと痛む。
純平……
下唇をぎゅっと噛み締め
気持ちを立て直す。
きっと純平の顔を見れば……
落ち着くはずだから…
大丈夫……
親にバレないように
階段をそーっと降りて
玄関を目指す。
息を殺し
ドアを静かに開け
何とかバレずに外に出た。
シーンと静まり返った道路
ちょっぴりひんやりとした空気
いつもなら
気持ちいいとさえ思えるはずなのに
街灯はあるものの
暗闇の中に1人でいるのは心細い。
ガサガサッ……
「きゃっ!」
風に揺れた木の音ですら
怖いと思ってしまう…
早く……来て……
両手で自分自身を抱きしめて
彼が来るのをひたすら待った。
「……まゆ?」
しばらくして
背後から声が聞こえた。
「何やってんだ?」
目の前には、雄大がいた。
「…雄大…なんで?」
「お前が外に出ていくのが見えたから。」
いつもより、低いトーンで
眉間にシワを寄せ
明らかに怒った声。
「えと……純平を…待ってて、、、」
「こんなに遅くに何やってんだよ!!
ただでさえ…今日はっ……」
途中まで言いかけて
雄大は慌てて口を抑えた。
「ちがうの……これは…」
言い訳をしようにも
何を言っても聞いて貰えないような
気がした。
「今日は止めろ。
明日、学校で会えるだろ?」
「だって…純平もう向かってるし…」
「携帯で連絡すればいいだろ?」
「……でも……」
私がオロオロしていると
雄大はふぅ……と、息をついた。